もし、経営している会社に後継者(跡継ぎ)がいない状態のまま対策をとらずに放置していたら、会社や個人事業はどうなるのでしょうか。
言うまでも無く、廃業や倒産などに追い込まれる可能性が高くなります。そうなれば、従業員や取引先に多大な迷惑をかけることになります。そんな結果に至らないためにも経営者は早めに対策を打つ必要があります。
この記事では、後継者がいない会社(個人事業主)が取れる対策について解説します。メリットとデメリットもあわせて説明しますので、参考にしてください。
目次
「後継者がいない」日本の現状
実態を知ることで、自社の現状と比較して対策を練ることができます。まずは、後継者がいない状況が日本全国でどれくらい生じているのか大きな視点で見ていきましょう。
後継者不足の現状
全国26.6万社のうち、約17万社が後継者が不在だとするデータがあります。実に、3分の2もの会社に後継者がいないのです。別のデータでは、60歳以上の中小企業経営者のうち、半数以上が廃業を予定しているといいます。
今の日本において、多くの会社は後継者不足の問題に直面しており、近い将来に廃業をせざるを得ないというのが実情なのです。
しかし、この数年間でみれば、後継者不在の企業数は減少傾向にあります。その主な要因として、国や地方自治体、金融機関などが対策を打っていることがあげられます。具体的な施策の一つに、M&A(企業の合併及び買収)もあります。
後継者不在の会社が多いものの、それに対処する必要性は広く認識されるようになっている、というのが現状といえます。
身内に事業を引き継ぐ割合
別の観点でもみてみましょう。
事業を子息・配偶者等に引き継ぐ「同族承継」の割合は、年々減少傾向にあるようです。それに対して、社内の役員や従業員に引き継ぐ「内部昇格」や社外の第三者等に引き継いでもらう「外部招請」は増加傾向にあります。
今、内部から外部へと目を向けることで、後継者がいない問題に対処する企業が増えています。M&Aなど、子息が事業を継ぐつもりがなかったり適格でなかったりした場合の選択肢が増えていることが、その理由の一つでしょう。後継者がいないことは、言い換えれば第三者などへ引き継ぐチャンスであるといえるかもしれません。
出典:
「後継者不在率」動向調査(2020年)|帝国データバンク
「中小企業の事業承継に関するインターネット調査(2019年調査)」|日本政策金融公庫
何が原因で後継者がいない、不足しているのか?
何が原因でこのように後継者がいない、跡継ぎ不足の状態が生まれているのでしょうか。
後継者不足の主な背景や原因は以下の3つだと考えてられています。
少子高齢化の進行
まず、少子高齢化など、社会の変化が原因のひとつでしょう。
厚生労働省が行った「2019年度 人口動態統計」によれば、出生数は86万5千人で、前年度比5万3千人減少です。1899年調査開始以来、過去最少を更新するなど、少子化が進行しています。
また、内閣府が出した「 2019年版 高齢社会白書」によると、65歳以上の高齢者が全国民に占める割合は28.1%です。いわずと知れた超高齢社会であることがわかるデータです。
事業承継の観点からは、「跡継ぎ候補の減少」と「経営者の高齢化」として捉えることができます。単に跡継ぎになる可能性がある人がおらず、結果として長期政権にせざるを得ない状況を招いているといえます。
後継者の経営に対する不安が大きい
親族あるいは社内の役員・従業員など後継者候補はいるものの、誰であれ、どの会社であれ、経営に対する不安を抱えているものです。
引継ぐ会社の規模が小さかったり景気の変動に弱かったり、経営基盤が脆弱ならばなおさらです。また、2021年現在は新型コロナウィルスが経済に打撃を与えている状況下にあります。この状況で事業を引き継がせ、成長させていくことは容易ではないでしょう。
もちろん、後継者側からみても会社に多くの不安要素がある限り経営を引き継ぎたくはないという人は多いようです。
経営者の事業承継に対する準備が不足している
経営者の事業承継に対する準備が不足していることも、後継者がいない原因のひとつと考えられます。
本来、事業承継には十分な準備期間と承継計画が必要です。しかし、日々の仕事に追われて、なかなか対応しきれていない経営者が多いというのが現状です。また、経営者自身が「まだまだ自分はやれる」と考えて、事業承継に対して早めに対策を取らないケースも散見されます。
後継者にするには、一定期間の教育が必要です。会社を引き継ぐ際には、株式等の買取資金や相続税(贈与税)資金、会社に債務があった時の経営者の個人保証の引き継ぎ等も必要です。これらの高いハードルを乗り越えることができず、事業承継がうまく進まないことが起こりうるのです。
後継者がいない経営者が取れる選択肢とは?
現状を踏まえて、後継者がいない経営者が取れる選択肢について解説します。
メリットとデメリットを勘案して、最終的に自社に適した方法を選ぶ必要があります。
親族外承継で後継者を親族外の人材に求める
親族内に適当な後継者が見つけられない場合、親族外で後継者を探す方法があります。
具体的には、社内で経営に深く関与している役員や、業務に長く携わり熟練度の高い従業員を後継者に指名するというやり方です。
また、同業他社であまり活躍の機会を与えられていない人材を自社に次期後継者として引き抜くというケースもあります。
いずれにせよ、自社の業務に精通している人材を登用することで、教育コストの低い後継者を確保することができます。
ただ、経営内容が悪い会社では、多くの人が後継者になりたがらないので、日頃から会社を黒字体質にしておく、事前に個人保証の問題などを処理しておく、などの対策も必要でしょう。
M&Aで第三者に会社を引き継いでもらう
それでも後継者が見つからない場合、M&Aで他社もしくは資本家等の第三者に会社を引き受けてもらう方法があります。
昔と比べてM&Aによる会社売却はかなり一般化しており、法律や税制度等から国の後押しもあってM&Aはかなり利用しやすくなっています。
そのため、後継者が見つからない場合にはこの方法を検討しない手はないでしょう。
ポイントは、いかに経営者が納得できる売却相手を見つけられるかという点にあります。まずは会社が属する業界のM&A取引に精通した仲介業者を探すことに注力するとよいでしょう。
何も対策せず時間の流れるままに問題を放置していては、やがて時間切れで廃業や意向に沿わないM&Aなどネガティブな選択を取らざるを得なくなります。それを避けるためにも、後継者がいないときは、自身が元気なうちに早めの事業承継対策を取っておくことが大切です。
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