「会社を清算する」とは、どのような意味なのでしょうか。また、会社を清算するためには何を行うべきなのでしょうか。
今回は、会社清算について解説していきます。ぜひ会社清算の全体像や流れを把握し、今後の意思決定にお役立てください。
目次
会社の清算とは
「会社の清算」の前には「会社を解散」というフローが発生します。会社の解散、清算の順にみていきましょう。
会社の解散
会社の解散とは、事業をストップさせることです。
「解散=消滅」という印象を持っている方もいるかもしれませんが、会社を解散した段階では、まだ消滅していません。まだ会社の債務や債権を整理していないため、清算すべき会社として存続している状態です。
ちなみに、会社の解散には2種類あります。
◆任意解散
(会社の自主的な意思による解散)
- 定款で定めた存続期間の満了
- 定款で定めた解散事由の発生
- 株主総会の決議
- 合併により会社が消滅する場合
◆強制解散
(破産や法的な理由により、やむを得ない解散)
- 破産手続開始の決定
- 裁判所による解散命令
- 休眠会社のみなし解散の制度
会社の解散が終われば、会社の清算手続きに移行します。なお、解散と清算の手続きを総称して、廃業と呼びます。
会社の清算
清算では、資産と負債を整理することで資産をすべて現金化して負債を弁済し、残った資産を株主に分配します。その際、資産超過の場合は通常清算、債務超過の場合は特別清算か破産手続きがとられます。
通常清算の詳しい手順は後述します。特別清算の場合は「特別清算」の申立てを、そして破産の場合は「破産」の申立てを、それぞれ裁判所にして清算を進めなければなりません。
会社の清算をした場合のメリット、デメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。
会社清算のメリット
確実に会社を終わらせられることです。経営者にとっては、今後の経営について悩む必要がなくなることは大きいことでしょう。
また、場合によっては、創業者として一定の利潤を確保できます。
会社清算のデメリット
従業員の雇用や取引先、顧客、地域との関係を失うことです。これは非常に大きなデメリットです。
また、資産を現金化しても借入を返済しきれないリスクがある点もデメリットでしょう。
なお、会社の清算で多いのは、以下のような事由です。
- 後継者不在のため
- 後継者候補の意識の問題
- 事業承継の資金がないため
- 経営者の時間的・体力的限界
後継者問題など、やむを得ず清算を行うケースも少なくありません。
会社の解散、清算の手続き
会社の解散、清算には、複雑な手続きを要します。ここで、その全体像を紹介します。
会社清算までの流れ
会社の解散、清算の手続きの具体的な手順を紹介します。
- 株主総会の特別決議による解散決議
解散決議には、3分の2以上の承認を得る「特別決議」が必要です。 - 解散、清算人選任の登記
会社解散が決定すると、その日から2週間以内に「解散の登記」と「清算人の選任登記」を行わなければなりません。 - 労働基準監督署・税務署などへの解散の届け出
- 清算人による財産目録・賃貸対照表の作成
株主総会により会社の解散が決議されると、清算人によって解散日時点での財産目録と賃貸対照表の作成が行われます。 - 清算人による債権者保護手続きの公告・個別催告
- 税務署への解散確定申告書の提出
- 清算人による残余財産の確定および分配
すべての債権を回収し債務を弁済した結果、財産が残っている場合は株主に分配します。 - 税務署への清算確定申告書を提出
- 清算人による決済報告書の作成
- 株主総会の開催、承認
残余財産の額と分配額が確定したら、株主総会を開催して承認を得ます。承認を得た時点で清算結了となります。 - 清算結了の登記
清算結了の登記は、株主総会で決算報告が承認されてから、2週間以内に行う必要があります。 - 税務署などへの清算結了の届け出
- 会社清算の完了
税務署などへの清算結了の届け出が済むと、会社清算は完了です。
手続きは非常に複雑です。
そのため、実務では税理士などの専門家の支援を受けながら手続きを進めるのが一般的でしょう。
解散決議から清算が完了するまでの期間
会社を解散させた場合、その旨をすみやかに官報(国が刊行する公告文書)にて公示しなければなりません。法律では、公示から2カ月の間は清算を完了させることができないと定められています。
したがって、最低でも2カ月、実際にはそれ以上の期間をかけて会社を清算します。
会社の清算とM&Aを比較
前述のように廃業することにはデメリットもある上に、手続きも煩雑です。
そこで、当該事業を廃止せず、第三者にM&Aで譲渡(承継)するケースがあります。
M&Aを選択するメリット
会社を清算するのではなく、M&Aを選択することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
会社や個人事業を存続できる
経営者にとって、会社が存続することはもちろん、取引先や顧客、地域との繋がりが維持されることは重要です。
M&Aならば、買収先に従業員の雇用条件を引き継ぐように交渉を行うことができます。
清算よりも売却益を見込むことができる
清算の場合、会社資産の処分は「清算価格」として安く現金化することになります。
一方、M&Aでは資産評価が正当に行われる上に、建物や土地などの有形資産以外に人材や取引先などの無形資産も評価されます。したがって、M&Aの方が高額の売却益を獲得できる可能性が高いといえます。
支払う税金を抑えることができる
経営者(企業のオーナー)からみた場合、清算とM&Aとでは税法上、受け取る金銭の種類が違います。そのため、仮に清算やM&Aで現金が手元に残る場合に課せられる税率に違いが生じるのです。
今回のテーマでは細かい説明は省きますが、大まかにいえば、清算のほうが税率が高くなります。そのため、M&Aを選択することで手元に多くのお金を残すことができる可能性が高くなります。
M&Aのデメリット
一方でM&Aにもデメリットがあります。
成功するとは限らない
手間と費用がかかるにもかかわらず、必ずしも成功するとは限らない点です。また多大なコストをかけた結果、納得いく売却先・承継先がみつからないことも決して少なくありません。そのため、M&Aを行う際には信頼できるパートナー選び方が必要になるでしょう。
清算も、代替案であるM&Aも、どちらにもメリット、デメリットはあります。今後の会社の存続や従業員の雇用を考慮した方針を固めた上で、信頼できるパートナーのサポートのもと、慎重に進めていきましょう。
M&A無料相談・お問い合わせ
不動産関連事業の売却または買収を検討中の方は、
お気軽にお問い合わせください。
イメージキャラクター花房里枝さん