近年、不動産業界では競合他社の増加や人員不足、後継者問題などで、事業の継続が難しく廃業する事業者も少なくありません。
その解決方法の1つとしてM&Aが注目されています。不動産のM&Aは通常とは異なる目的で実施されることがあります。
この記事では、不動産のM&A事例を紹介していきます。
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目次
不動産のM&Aの特徴と流れ
一般的なM&Aは売り手の株式や事業を買い手企業に譲渡することを指します。
一方で、不動産のM&Aは売り手の企業が保有する不動産のやり取りが主な目的となっています。
ここからは不動産のM&Aの特徴とスキーム、宅建業法との兼ね合いなどを解説していきます。
不動産のM&Aとは
不動産のM&Aは、一般的なM&Aと異なり、事業や法人自体を買収することが目的ではなく、売り手の企業が保有している不動産の買収が目的です。
そのため不動産のM&Aは不動産取引の一種として位置付けられることもあります。
売り手のメリット
企業が保有する不動産を、通常の不動産取引で売却する場合、不動産売却益に対して少なくとも20%の法人税がかかります。
また、法人税を差し引いた売却益が経営者に配当された場合、最大45%の所得税が発生します。
この場合、事業の衰退が理由で、不動産の売却益を得ようと期待したにも関わらず、高い税金がかけられることにより、売り手側は想定よりも手元に残る金額が少なくなってしまうでしょう。
一方で、不動産をM&Aで譲渡する場合は、(もちろん諸条件はありますが、)株式譲渡にて法人ごと譲渡するので、税金は譲渡益に対して約20%かかるだけです。
つまり、売り手側にとって通常の不動産売却よりもM&Aで不動産を譲渡したほうが、節税できる可能性があるのです。
買手のメリット
不動産のM&Aは買い手側にもメリットがあります。
売り手側はM&Aで譲渡することにより通常の不動産売却よりも、手元に残る金額が多くなるので、価格交渉がしやすく、通常の不動産取引よりも不動産を安く取得できるでしょう。
一方で、一般的なM&Aに比べると、不動産M&Aは手間や時間がかかるのに加え、M&Aと不動産、両方の専門知識が必要です。
不動産のM&Aのスキーム
保有不動産の取引を目的とする不動産M&Aは主に、株式譲渡と会社分割のスキームを利用しておこなわれます。
それぞれについて説明していきます。
株式譲渡での不動産M&A
株式譲渡とは、売り手企業の株式の一部もしくは全部を、買い手企業に譲渡することにより、法人や事業ごと譲渡するM&Aの手法です。
株式譲渡であれば、株式を買い手企業に譲渡するだけで、不動産の保有権も売り手から買い手に移行し、手続きも比較的スムーズだといえます。
一般的に、すべての株式を譲渡した場合、売り手企業は解散する流れとなります。
会社分割での不動産M&A
不動産だけを手放して事業を継続したいという場合は、会社分割による不動産M&Aが向いています。
不動産を保有する会社を新設し、新しく作った会社を株式譲渡により買い手企業に譲渡すれば、事業は継続しつつ譲渡益を手にすることができます。
宅建業法的に決まりはある?
不動産のM&Aを行うにあたって宅建業法的には何の問題もありません。
ただし株式譲渡をしたからといって、売り手側の宅建免許を買い手側に移行することはできません。
単に不動産の所有権を譲渡するぶんには問題ないですが、譲渡する事業が不動産事業の場合、買い手企業が宅建免許を取得していないと不動産業を営むことができません。
そのため、買い手企業が宅建免許を保有していない場合は、新たに取得の手続きをする必要があります。
新たに免許を取得するには、知事免許で1ヵ月、大臣免許だと3ヵ月ほどかかります。
買い手側が不動産事業も買収する場合は、早い段階から準備を進めていく必要があるでしょう。
不動産会社同士の不動産M&A事例
ここでは不動産業を営む会社同士のM&Aの事例を紹介していきます。
株式会社AVANTIA
注文住宅事業をはじめ、戸建分譲事業、リフォーム事業などに力を入れるAVANTIAは、2021年4月に、京都で戸建住宅事業を展開するドリームホームグループを子会社化しました。
AVANTIAは、主に東海エリアで戸建事業を展開しており、京都府内No.1の戸建供給実績を誇るホームグループを傘下に入れることで、関西での事業展開を推し進める狙いがあります。
出典:ドリームホームグループの株式の取得(子会社化)に関するお知らせ
トーセイ株式会社
トーセイは、不動産の開発や賃貸事業および不動産ファンド・コンサルティング事業を展開する東証プライム上場企業です。
トーセイグループは、不動産M&Aにより優良な不動産を取得し、収益性を高め売却するといった事業モデルを確立しています。
それにより2001年から2018年までで13件の不動産M&Aをおこないました。
なかでも、2021年9月に行なったプリンセスホールディングスを子会社に持つアイ・カンパニーの買収は注目すべきです。
トーセイグループは従来、一棟不動産の取得と販売はおこなっていましたが、区分不動産の買取再販の実績はありませんでした。
プリンセスグループは、主に都心で区分マンションの買取再販を展開している企業なので、買収により、シナジー効果が発生し事業領域の拡大が期待されています。
出典:株式会社アイ・カンパニー並びにその子会社4社の株式取得(子会社化)、並びに第三者割当による自己株式処分の払込完了に関するお知らせ
ハウスコム株式会社
ハウスコムは不動産の賃貸仲介を中心に、売買仲介やリフォーム事業などを展開する企業です。
ハウスコムは、2021年3月に大阪市内を中心に関西圏で不動産賃貸仲介事業を展開している宅都を会社分割により買収しました。
関西エリアで店舗数の少なかったハウスコムは、関西エリアに強い宅都を傘下に入れることで事業エリアを拡大するとともに、社員数の増加及び人材育成の強化が可能になると判断し、M&Aに踏み切りました。
また、ハウスコムは、2019年に工事業務を営むエスケイビル建材も買収しており、M&Aにより事業の拡大を推進している企業のひとつだといえます。
出典:株式会社宅都の株式取得(子会社化)および株式会社宅都ホールディングスとの業務提携について
異業種による不動産M&A事例
不動産M&Aは不動産業を営む企業同士だけでなく、異業種の会社との間でも活発におこなわれています。
ここからは不動産会社と異業種間による不動産M&Aの事例について紹介します。
株式会社DYM
Web事業や人材事業、海外医療事業をはじめ幅広い事業を展開しているDYMは、2021年3月に、不動産コンサルティング事業を営む株式会社エイジアトラストを子会社化しました。
本件の実施には、新型コロナウイルスの影響で首都圏を中心にオフィス移転のニーズが高まった背景があります。
DYMグループは10,000以上のクライアントとの取引があり、自社のお客様にもオフィス移転のニーズがあると考えていました。
エイジアトラストは、法人向けのオフィス移転に関するコンサルティング事業を展開しており、DYMの傘下にすることで、これまで事業展開していなかったオフィス移転や店舗開拓のニーズに応えるという狙いがあります。
出典:DYM、オフィスビル仲介や法人向け不動産コンサルティング等を行う株式会社エイジアトラストの株式取得(子会社化)
京王電鉄株式会社
鉄道の運営を主な事業とする京王電鉄は、2021年11月に、株式会社タカラレーベンの傘下にあった株式会社サンウッドの株式を取得し、資本業務提携をおこないました。
株式会社サンウッドは、富裕層が対象の新築マンションの分譲事業を得意としており、鉄道事業のほかに不動産事業を展開している京王電鉄は、本提携により分譲マンション部門の強化を図る狙いがあります。
これにより、サンウッドは京王電鉄の関連会社となり、不動産開発事業における仕入れや設計販売などの事業を京王電鉄と協力しながら進めていくことになりました。
株式会社RobotHome
AI・IOT事業を手がけるRobotHomeは、2021年12月に、長年不動産業を営む株式会社アイ・ディー・シーの全株式を取得しました。
RobotHomeは、賃貸経営の自動化を目指すIoTプラットフォーム「Residencekit」を提供しており、長年にわたり不動産売買仲介および賃貸仲介を生業としてきた、アイ・ディー・シーのノウハウを取り入れることで、より実情に近い課題をテクノロジーで解決できると判断し、子会社化することを決定しました。
出典:株式会社アイ・ディー・シーの株式取得(子会社化)に関するお知らせ
このように不動産M&Aにはさまざまな形やタイプがあり、案件によって条件や進め方は大きく異なります。
上述しましたが、不動産M&Aには不動産の知識だけでなくM&Aの専門知識も必要です。
通常のM&Aと比較しても難易度が高いといえますので、不動産M&Aを検討している方は専門のアドバイザーに相談することをおすすめします。
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