新型コロナウイルスの世界的な流行により、多大な被害を受けた日本経済。この煽りをうけ、経営に打撃を受けたという中小企業も少なくないでしょう。
今回は、新型コロナによって影響を受けた経済状況における会社売却、事業売却の実態についてみていきます。
なお、2022年でみると、ウクライナ情勢や過度な円安など経済的なマイナス要因は複数ありますが、この記事では新型コロナのみを取り上げて解説します。
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目次
コロナ禍でもM&Aは増加傾向にある
結論からいえば、コロナ禍であってもM&A数の減少はなく、むしろ大きく増加しています。
専門誌『マール』によると、日本企業における2021年のM&A件数を集計すると4,280件で、前年の3,730件から14.7%もの増加を記録しています。この件数は過去最大とのことで、2011年時点の約1,700件から250%もの伸びをみせています。
しかし、コロナ禍にもかかわらず、なぜこれほどまでも多くのM&Aが行われたのでしょうか。
ここで、3つの考えられる要因を紹介します。
新型コロナが企業の経営基盤に影響を与えた
企業体力のあまりない中小企業の多くは、コロナ禍で経営が立ち行かなくなり、倒産に追い込まれています。帝国データバンクによると、2022年8月31日現在で、3,991件もの新型コロナウイルス関連倒産があるといいます。
M&Aは倒産を免れるための手法のひとつです。倒産の件数が増えているということは、それを回避するためのM&Aが増えていてもおかしくないでしょう。
また、もともとM&Aの動機として多いのが、後継者不足です。新型コロナが蔓延したことで事業の先が読めなくなり、その事業を継ぎたがらない後継者が増え、M&Aの時期が前倒しされた可能性を指摘する専門家がいます。
なお、飲食業や建設業など新型コロナの影響が大きかった会社についてはもちろんですが、それ以外の会社においても同様の問題が起きているようです。
新型コロナに関連する補助金が活用された
よく知られているところでは、「事業承継・引継ぎ補助⾦(令和3年、旧:経営資源引継ぎ補助金)」があります。
事業の承継や譲渡にかかる経費の一部を負担してくれるというもので、事業売却後に残せる金額を大きくできる点が魅力です。
また、廃業や再チャレンジにかかる費用についても負担される可能性があるので、コロナ禍における事業売却を検討している方は、ぜひ専門家に相談してみましょう。
詳しくは、補助金の活用サイトをご確認ください。
日本でもM&Aが一般化してきた
「年々増えている」という点に着目すると、アメリカで一般的だったM&Aの手法が、日本でも一般化してきたことも要因の一つでしょう。
それがわかるデータとして、中小企業庁が新設した制度に登録したM&A仲介事業者・ファイナンシャル・アドバイザーの数は、2,253件だったというのがあります。2021年のM&A件数が約4,300件なので、事業者数がいかに増えているかがわかります。
コロナ禍で会社や事業を売却するメリットは?
コロナ禍でも件数が増えるM&Aですが、具体的なメリットはあるのでしょうか。
ここで、2つのメリットを紹介します。
倒産を回避できる
すでに新型コロナの影響は長期間にわたっており、当初の予想をはるかに超えるダメージを多くの企業に与えています。
経営資源を多く持たない中小企業は、コロナ禍で本業が傾いたからといって、ほかの事業に注力して立て直すことは容易ではありません。
経営が立ち行かなくなると、当然、倒産が選択肢のひとつとして出てきます。しかし、倒産してしまえば従業員に多大な迷惑がかかり、メリットはほとんどありません。
しかし、M&Aを実施すれば倒産を回避できます。場合によっては雇用を守ることができたり、新たな経営資源とのシナジーで会社の立て直しにつながる可能性もあります。
外部の後継者に任せられる
同様にして、後継者が事業を継ぎたがらなくなった場合でも、上手く売却すれば、外部のふさわしい人材に事業を任せることができます。さらに、事業を現金化できるため、経済不安が続く中で、オーナーの生活も安定させることができるでしょう。
経営が低迷しているときのM&Aにおける注意点
M&Aでは注意点が多いため、専門の仲介事業者に任せることが多いでしょう。
ここで、仲介事業者に依頼する場合であっても、経営者が押さえておきたいポイントを紹介します。とくに経営が低迷しているときに注意すべきことを紹介しますので、参考にしてください。
債務整理
会社売却では、売り手と買い手のほか、取引先や銀行などの債権者、従業員などさまざまな利害関係者(ステークホルダー)との調整が必要です。
もし売却する会社が債務超過している場合は、それを整理しなくてはならないことがあります。少し専門的ですが、吸収合併や新設分割であれば、会社法に基づく債権者の保護手続きも行います。
このような債務の整理においては、債権者の理解が重要です。取引での不要なトラブルを避けるためにも注意しましょう。
詐害行為に注意
詐害行為とは、債務者が債権者を害することを知りながらも自己の財産を減らすことを指します。要するに、自分の利益を守るため、わざと債権者を損させることです。
これに該当する場合は、裁判所を通し取り消し請求がなされることがあります。また、譲渡後であっても債務履行を求められる可能性があります。
経営が苦しいときは、少しでも利益を守ろうと動きがちです。たしかに、M&Aなどの取引では上手くやれば大きな売却益を残せるケースもあります。しかし、あくまでそれはルールに則った上で実行すべきもので、余計なリスクを負うべきではありません。
M&Aで失敗しないためにも、ぜひ取引に精通した専門家に相談の上で進めていくとよいでしょう。
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