経営者が特定の事業を売却したい場合は、事業売却が選択肢のひとつとなります。
この記事では、事業売却の方法や戦略についてわかりやすく解説します。
目次
事業売却とは?
まずは、事業売却がどういった手法なのかを説明します。
事業売却の特徴
事業売却とは、会社が事業の一部もしくは全部を第三者に売却するというM&Aの戦略の一つです。
第三者に事業を譲渡するという側面から「事業譲渡」とも呼ばれています。
事業売却で売却対象となる事業には、以下のようなものがあります。
- 有形財産
- 無形財産
- 人材債務
- 事業組織
事業売却は、会社そのものを売却するわけではなく、事業の一部もしくは全部を売却するという手続きです。そのため、残したい事業がある場合や、新規事業を立ち上げたい場合にとられる選択肢です。
なお、会社法21条には、事業売却をした場合に同じ事業を新しく始めることを禁止する条文があります。
第21条
- 事業を譲渡した会社(以下この章において「譲渡会社」という。)は、当事者の別段の意思表示がない限り、同一の市町村(東京都の特別区の存する区域及び地方自治法(昭和22年法律第67号)第252条の19第1項の指定都市にあっては、区。以下この項において同じ。)の区域内及びこれに隣接する市町村の区域内においては、その事業を譲渡した日から20年間は、同一の事業を行ってはならない。
- 譲渡会社が同一の事業を行わない旨の特約をした場合には、その特約は、その事業を譲渡した日から30年の期間内に限り、その効力を有する。
- 前2項の規定にかかわらず、譲渡会社は、不正の競争の目的をもって同一の事業を行ってはならない。
なぜこのような規制があるのでしょう。それは、売り手側の企業が経営してきたノウハウを利用してその事業を再び行うことできてしまえば、買い手側の企業の不利益になると考えられるためです。
会社売却と事業売却の違いは?
会社売却と事業売却の大きな違いは、株主や代表者に法人格の所有権が残るかどうかです。
会社売却では株式や経営権そのものを第三者に売却するので、株主や代表者に法人格の所有権は残りません。一方で、事業売却では、法人格をそのままに事業のみを切り離します。
お金の流れで考えると、会社売却では株主や代表者(個人)に、事業売却では売却した会社(法人)に、資金が入ります。
この違いにより、税金の考え方にも違いがあります。事業売却の場合は売却代金が法人所得となるため、法人税がかかるのです。
事業売却の方法は?
ここからは、実際の事業売却の手段や手続きの流れを解説していきます。
事業売却の手段
事業売却の手段には、2種類あります。
①一部譲渡
一部譲渡とは、会社の事業の一部を売却することです。
主な目的は、事業の選択と集中です。
複数の事業を営んでいる場合に、一部の事業を手放して、経営資源を注力事業に集中させることがあります。事業売却による資金を残した事業に充当することもできます。
②全部譲渡
全部譲渡とは、会社の事業全てを売却するということです。
例えば、法人格だけを残して新しい事業を立ち上げたいときに、既存の事業を第三者へ譲渡することがあります。会社売却と比べると法人設立の手間が省け、費用が抑えることができます。
具体的な売却の流れ
具体的な事業売却の流れは以下の通りです。
- 事業売却の検討
- 買い手企業の選定
- 買い手企業との面談
- 基本合意書の契約
- 買い手企業による調査(デューディリジェンスの実施)
- 最終合意契約
- 株主総会の特別決議
- 事業売却のための作業、移行手続き
複雑な手続きが多いため、M&Aアドバイザーなどの仲介会社を通して事業売却を行う場合が一般的です。専門家を通じて手続きした方が、後々のトラブル回避に役立ちます。
事業売却の戦略の立て方
無策で事業売却を進めてしまえば、相場より安い金額で取引されてしまう可能性も十分に考えられます。そのため、先のことを考えた戦略を立てる必要があります。
また、戦略的な売却はスムーズな取引を行うためにも大切です。
自社の経営分析をしよう
事業売却を円滑に進めるためには、自社分析と市場調査をする必要があります。
自社の経営分析を行うメリットは3つあります。
メリット①事業価値を把握できる
自社分析を行うことで、事業の強み、弱みや財務状況がわかります。
事業規模、売上、シェア率、工場、店舗などの資産状況を把握することで、事業の価値を見出すことができます。
事業の価値を理解すれば、「どんな企業に需要があるのか?」「どのくらいの相場で売れるのか?」などの基準がわかるようになります。
メリット②売却目的を整理できる
自社の抱えている問題や状況を洗い出すことで、「なぜ事業を売却しなければいけないのか?」という売却目的を把握することができます。
自社分析を行うことによって、実際には売却以外の方法が見えることもありますし、他の事業も売却した方が良い場合も出てくるでしょう。
メリット③売却先企業にアプローチしやすくなる
事業の現況を正確に理解しておくことで、売却先企業へのアプローチや専門家への相談がスムーズになります。
前述した通り、事業の価値や売却の目的をはっきりさせることで、事業の需要を把握できます。買い手企業に対して自社の強みを伝えることで取引に繋がるケースもあります。
また、経営者が状況を把握していないということは、買い手側にとってもリスクです。売却がスムーズに進まない場合や、交渉が上手く行かない場合もあります。
事業売却の準備をしよう
事業売却の方針が固まったら、売却に向けて準備を行いましょう。
- 市場調査
- 売却時期の策定
- 不明な取引の調査、解決
- 売却交渉の方針策定
これらを行うことにより事業価値をより高めることができ、スムーズな売却が可能になります。
事業売却の準備には、調査時間も含めてかなりの経営者だけで行うことが困難な場合も多いです。
適切なアドバイザーに相談しよう
事業売却は法務や財務に関して複雑なことが多くなるため、専門家のサポートが必要不可欠です。
事業売却の相談先としては以下の先が考えられます。
- M&Aの専門家
- 顧問税理士
- 取引先金融機関
このうち、M&Aの専門家を利用することで売却価格を上げる方法や経営上のアドバイスを受けることができます。
また、買い手企業の選び方のサポートや事業売却の具体的なタイミングなども教えてくれるため、スムーズな事業売却を行うこともできます。
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