赤字会社とは、一般的には費用が売上を上回っている経営状態の会社のことをいいます。
会社の売買において、対象の会社が赤字であることは安全性が低いイメージを持たれることが多いでしょう。しかし、それでも赤字会社を買収する事例はみられます。なぜ、そのようなことが起きているのでしょう。
この記事では赤字会社の買収について、売買価格や買収するメリットを紹介します。
目次
赤字会社の買収メリット
収益性が低い赤字会社ですが、買収することにはどのようなメリットがあるのでしょうか。
繰越欠損金による節税効果を見込むことができる
法人が赤字を計上するとその赤字はその先10年間にわたって繰り越すことができ、将来に出る利益を相殺して、納税額を減らすことができます。
この赤字額を繰越欠損金といいます。
繰越欠損金はM&Aの後も、買収された企業が使うことができます。つまり、繰越欠損金がある企業を買収することで節税効果を得ることができます。
ただし、繰越欠損金を目的とした買収を行うとその繰越欠損金の使用が認められないケースがあります。そのため、節税を目的として買収する場合は、事前に税理士などの専門家に相談する必要があります。
シナジー効果がある
シナジー効果(相乗効果)は、既存事業と買収事業の相互関連により売上を増大させることができる効果のことです。
M&Aでは、「現時点でその企業の価値がどれくらいあるか」ということだけでなく、「自社との組み合わせでどれくらいの価値になるか」という点を重視することがあります。赤字会社であっても、買収することで当該企業が持っているノウハウや販路、特許などを自社で使えるようになるため、シナジー効果が得られる場合には積極的に買収が行われます。
また、赤字会社の事業や組織風土によっては買収企業のノウハウを提供することでシナジー効果が得られる可能性があります。
投資額を抑えられる
赤字会社の場合、計算方法によっては黒字会社よりも大幅に少ない投資額で買収することができます。
つまり、仮に買収することでリターンを得られるのなら、赤字会社を買収するほうがコストを抑えることができるのです。
赤字会社の買収価格の計算方法は?
メリットが十分にあるにせよ、買手側としてはリスクの高い会社を買収するならば、適正な価値を算定する必要があります。
ここで、いくつかある赤字会社の買収価格算定方法について解説します。
コスト・アプローチ法
コスト・アプローチ法とは、被買収企業の純資産額をもとに買収価格を計算する方法のことです。
コスト・アプローチ法には、以下の2種類があります。
- 時価純資産法
- 簿価純資産法
時価純資産法は、純資産を時価で計算して買収価格を算出する方法です。
簿価純資産法は、簿価(帳簿価額)をもとに買収価格を計算する方法です。
一般的には2つの方法で計算したのち、自社にとって有利になる計算方法を選択し、買収価格とします。
インカム・アプローチ法
インカム・アプローチ法とは、収益をもとに企業価値をもとに買収価格を計算する方法です。
インカム・アプローチ法には、以下の3種類があります。
- DCF法
- 収益還元法
- 配当還元法
DCF(Discounted Cash Flow)法は、将来キャッシュフローを、現在価値に割り戻して買収価格を計算する方法です。インカム・アプローチ法の中では最も基本的な計算方法とされています。
収益還元法は、将来その会社が生み出すと考えられる収益を、現在価値に割戻して買収価格を計算する方法です。
配当還元法とは、直近の配当額から買収価格を計算する方法です。
マーケット・アプローチ法
マーケット・アプローチ法とは、市場での取引実績をもとに買収価格を算出する計算方法です。
- 市場株価法
- マルチプル法
株式譲渡で買収を行う場合は、市場株価法を用います。市場株価法は、上場企業の市場価格を基準にして評価を行う方法です。マーケットアプローチ法においては、こちらが一般的です。
類似企業をもとに買収価格を決める場合には、マルチプル法(類似企業比準法、類似業種比準法)を用います。マルチプル法は、類似する企業や業種の評価倍率を基に価値を算出する方法です。
赤字会社の買収を成功させるポイント
赤字会社を買収することにはリスクが伴います。ここからは赤字会社の買収を成功させるポイントを解説します。
適正な買収価格の算定
赤字会社は財務面で問題を抱えているケースが多いです。そのため、買収したあとに大きな影響が出ないよう、適正な買収価格を算出する必要があります。
また、前述のようにM&Aにおける買収価格の計算方法は多岐にわたります。安く買いたい側と買手会社と、高く売りたい売手会社。交渉によって双方が納得できる価格を算定していくことが重要なのです。
デューデリジェンスの徹底
デューデリジェンスとは、企業監査のこと。
被買収企業が赤字会社であるということは何かしらの問題を抱えていることを示しています。そのため、その問題を受け入れても問題がないか精査するために被買収企業が抱えている問題を明らかにする必要があります。
専門家の協力を得て、デューデリジェンスを徹底的に行いましょう。
買収の目的の明確化
買収の際には、その目的を明確にしておきましょう。
目的が明確でないと買手会社の業績まで悪化する恐れがあります。「せっかく買収したのだから、いつかは成果が出るかもしれない」「買収した企業をすぐに売却することは損失が大きい」と考えず、買収の目的を明確化して、失敗した場合にもすぐに次の対策が打てるような体制をつくっておくことが大切です。
しかし、買収の目的を明確化することは容易ではありません。そこで、M&Aの専門家に相談をして、判断を下すための情報を提供してもらうのです。そうすることで自身の手間をかけることなく、またリスクを抑えた取引を進めることができるでしょう。
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