「会社の身売り」というと悪い印象を受けますが、実際は、会社を第三者に売却するM&Aなどのことであり、現代では、事業を存続させるための有効な手段です。決して、事業や社員を見捨てることではなく、売却契約時の努力によっては、むしろ、今まで守り抜いてきた技術や事業、そして社員の人生を、引き続き守り、より豊かにしていくための動きです。
今回は、会社の身売り(第三者への会社売却)について、次のような疑問に答えていきます。
- 会社の身売りというと、ネガティブなイメージがあるが、実際のところ、どのようなもので、どのようなメリットがあるのかを知りたい
- 会社を売却する場合、長年、自社のために頑張ってくれた社員を裏切るようで不安だ
- 実際に、会社を売却する上での具体的な手続きを把握したい
会社売却を検討する上で必要な情報が手に入りますので、ぜひ最後まで記事をご覧ください。
目次
会社の身売りとは?
「会社の身売り」とは、会社の事業や営業権などを、社員や親族ではなく、第三者の個人や会社に売却することを指すM&Aの一形態です。
会社売却が一般的でなく、「よそ者」に会社を売り払うことに抵抗感や、ネガティブな印象が強かった時代には、「会社の身売り」と呼ばれていたようですが、現代においては、多くの経営者が、かけがえのない事業を存続させるための手段として、しばしば検討されています。
会社の身売りのメリット5選
今回は、身売り(第三者への会社売却)のメリットを5つご紹介します。
事業承継(社員・顧客・技術の承継)を行うことができる
会社売却により、社員との雇用契約や顧客との商取引、事業、技術を売却先に引き継ぐことができます。社員や親族への承継が難しい場合に、廃業という形をとるのではなく、会社売却という形で事業を承継できないか検討するのです。
また、身売りをすると社員はどうなるのか、不安をお持ちの方もいるでしょう。基本的に、売却後も会社と社員との雇用契約は存続します。しかしながら、売却後に、売却先が社員をリストラすることを阻止することはできません。リストラを防ぎたいという強い意思がある場合は、新たな経営者の考え方に納得できるかを事前に確認しておいたり、契約時に社員の雇用継続について定めるように交渉したりする方法があります。
事業のさらなる発展が期待できる
事業を存続させるだけでなく、売却先企業の事業とのシナジー効果や、さらなる資金や人員の配置により、事業がさらに発展する可能性も見込めます。
したがって、事業の発展という観点で比較した時に、社員や親族への事業承継よりも、第三者への会社売却の方がより良いという判断もあり得るでしょう。
売却利益(創業者利益)が手に入る
株式を保有している経営者や株主は、株式の売却利益を手にします。
売却交渉次第ではありますが、事業が成長していたり、将来性が期待できる場合は、多額の売却利益も見込めるかもしれません。
保証や債務から解放される可能性がある
会社の債務について、経営者自身が個人保証あるいは連帯保証人となっている場合があると思います。
会社の身売り(第三者への会社売却)においては、契約上で、保証債務を売却先が引き継ぐ旨を定め、金融機関が合意することができた場合、経営者自身は保証債務を手放すことができます。
廃業費用が不要となる
事業を承継せず、廃業する場合、登記費用や、手続きのための弁護士・税理士依頼費用など発生します。
事業を承継する場合、廃業費用はかかりません。むしろ、先述の通り売却収入を得られる可能性さえあります。
第三者への会社売却の具体的な手続きと留意点
実際に、第三者の個人や企業に会社を売却することになった場合には、どのような手続きを踏むのでしょうか。
また、経営者の思いをしっかりと契約で落とし込むためにはどのような点に留意すべきなのでしょうか。
M&A専門家と相談しながら、売却準備
会社売却においては事前準備が重要ですので、専門家の力を借りながら進めるようにしましょう。
具体的には、以下のような準備が挙げられます。
- 実現したい売却条件の整理
- 売却スキームの決定
- 売却候補先の選定
- 自社の企業価値の算出
- 売却交渉をうまく進めるための戦略立案
- 提案書作成
準備段階では、会社売却を検討しているという事実が社員や株主に漏洩しないよう、仲介会社や売却候補先との間で秘密保持契約を締結することが重要です。
相談先としては、M&A仲介会社や、金融機関、手続き面では弁護士事務所・税理士事務所などあります。
売却候補先と面談を実施
経営者もしくはオーナー同士の面談では、売却候補先の経営者に対して自社の企業としての魅力や将来性についてプレゼンテーションします。売却に際して、社員の雇用継続などの懸念点がある場合は、売却候補先の経営者の考えや方針を聞き出しておくこともあります。
売却候補先より、意向表明書の提示
会社買収を希望する売却候補先は、売り手側に意向表明書を提出します。
表明書には、売却候補先の企業概要や、売却を希望する理由、譲渡金額、手続き面の段取り、売却後の事業展望などが記載されています。
複数の売却候補先とコンタクトを取っている場合、意向表明書を見比べながら売却先を選んでいくことになります。売却候補先への会社売却が本当に望ましい選択なのか、慎重に判断していくことが求められます。
基本合意契約書を締結
売却候補先を選定した場合、候補先と基本合意契約書を締結します。
基本合意契約書においては、一般的に、売却スキームや価格、時期、独占交渉の有無、デューデリジェンスなどについて記載します。
最終的な合意ではありませんが、最終的な合意に至るまでのプロセスにおいてトラブルが生じないようにするため、事前に必要な事項を合意しておきます。
売却候補先がデューデリジェンスを実施
デューデリジェンスとは、M&Aの買い手企業が、売り手企業から情報開示を受けながら、外部の専門家と共同で、買い手企業の経営実態や企業価値、リスクなどを精査するプロセスのことです。
売却候補先は、デューデリジェンスを実施することを通じて、買収条件や、最終的に買収するかどうかを判断します。
売却候補先には、必要な情報を包み隠さず、開示しましょう。一方で、事実とは異なる情報が伝わることや、根拠もなくして買収価格を引き下げる交渉を受けることを防ぐためにも、デューデリジェンスの事前準備は入念に行いましょう。
最終契約書を締結
売却交渉に双方が合意すると、最終契約書を締結します。
売却条件や具体的な売却手続き、売却後のトラブルが生じた場合の取り決めなどを合意し、法的拘束力がある契約となります。
外部の専門家に頼りながら、自社の思いや想定と異なる契約になっていないか、入念に確認することが重要です。
売却のための手続き、買収代金支払
登記などの手続きや、買収代金の支払いを経た後、売却先企業によって、事業が承継されていきます。
会社の身売りについて専門家に相談してみよう
会社の身売り(第三者への会社売却)について、メリットや具体的な手続きをご紹介しました。
第三者への会社売却を本格的に検討したい場合は、個社の事情や状況に併せた判断が必要ですので、売却候補先を探す上ではM&Aの専門家、手続きや税務面では弁護士や税理士や、司法書士、金融機関の担当者などに相談してみてください。
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