M&Aといえば大手企業の合併や買収を想像する人も多いのではないでしょうか。近年では M&Aが経営戦略の1つとして広く普及したことで、会社や企業の大小を問わず活発にM&Aが行われています。
そのなかでも特に注目を集めているのが小規模M&Aです。 特に後継者不足や経営難にあえぐ中小零細企業の経営者や個人事業主は、小規模M&Aを成立させることで、廃業を免れることができます。
今回は小規模M&Aについて、特徴や進め方、小規模M&Aをすることによる売り手側と買い手側それぞれのメリットとデメリットなどを解説していきます。
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目次
小規模M&A(スモールM&A)とは?
企業の大小に関わらず、M&Aは盛んに行われています。そのなかでも活発に行われているのが小規模M&Aです。ここからは、小規模M&Aとはどのようなものなのか解説していきます。
小規模M&Aの定義
小規模M&Aとは、M&Aの取引金額や、取引をする企業や事業が小規模であるM&Aのことを指します。スモールM&Aとも呼ばれています。
小規模M&Aの明確な定義は存在しませんが、一般的に、年間の売上高が1億円以下の企業や事業を売買する場合には、小規模M&Aと呼ぶことが多いようです。
小規模M&Aの案件は、規模の小さい中小企業や創立間もないベンチャー企業、個人事業の売買などが多いです。 また、収益化が見込めるメディアやWebサイトの売買なども小規模M&Aに該当します。
小規模M&Aが注目されている理由
近年、小規模M&Aが注目されている理由は大きく分けて2つあります。
1つ目の理由は、近年経営者の高齢化や後継者不足の問題が深刻になっており、小規模M&Aがそれらの解決方法になるということです。
(引用元:中小企業庁「経営者の世代交代」から抜粋)
上のグラフは中小企業庁が発表した、中小企業の経営者年齢の分布です。 1995年から2018年の23年間で、中小企業の経営者の年齢は20歳近く高齢化が進んでいます。
(引用元:中小企業庁「中小企業白書 第2部 深刻化する人手不足と中小企業の生産性革命」より抜粋)
また、上のグラフは中小企業庁が発表したもので、経営者の年齢別にみた後継者の決定状況を表しています。 60歳代では53.1%、70歳代では42.3%、 80歳代では34.2%の経営者が後継者不在であると回答しています。 60歳以上の後継者不在率は48.7%となっており、中小企業の後継者不足は深刻であることがわかります。
経営が黒字であっても事業を承継できる後継者がいないため、 廃業せざるを得ないという経営者も少なくありません。
このような状況を解決できる方法として小規模M&Aが注目されています。 親族や会社内に後継者候補がいなくても、小規模M&Aで会社や事業を譲渡することができれば、事業承継を実施できます。
また、小規模M&Aが注目されている2つ目の理由は、M&Aが普及したことにより、関連サービスや専門の事業者が増えた結果、手軽にM&Aができるようになったことが挙げられます。
以前は、仲介会社が少なかったり、莫大な費用がかかるという理由から、M&Aはあまり合理的な手段ではありませんでした。しかし近年では、M&Aが普及してきたことにより、仲介会社やマッチングサイトなどが増え、従来よりM&Aを検討しやすくなったといえます。
さらに、小規模M&Aに特化した仲介会社や小規模M&A専用のマッチングプラットフォームができたことにより、M&Aでネックとなる費用も抑えることができ、手軽に実施できるようになってきています。
このような背景から小規模M&Aを実施する経営者は増えています。
廃業する会社を買うメリット
小規模M&Aが増えている理由の1つに、廃業を検討している会社を買うことで事業承継を行う個人が増えたという背景があります。
廃業予定の会社を買うとどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なメリットは以下の通りです。
- 通常よりも低コストで買える
- ゼロから事業を立ち上げる必要がなく、買収後すぐに利益が出やすい
- 顧客や取引先、 従業員を引き継ぐことができる
- 経営状況を見直す余地が見つかりやすい
- 赤字企業の繰越欠損金で節税につながる
- 既存のノウハウや仕組みを得られる
これらのメリットは新たに会社を起こす場合には得られにくいものであり、廃業を検討している会社を買うことならではのメリットだといえます。
小規模M&Aのメリット・デメリット
小規模M&Aにはどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。ここからは、売り手側と買い手側に分けて、それぞれのメリットとデメリットを紹介していきます。
売り手側のメリット
売り手側にとって小規模M&Aのメリットは何より、 廃業を逃れ会社や事業を継続できるという点です。廃業する場合は従業員をはじめ、顧客や取引先にも影響を与えてしまいますが、小規模M&Aで事業承継ができれば、これらを回避もしくは周りへの影響を軽減できるでしょう。
また、通常のM&Aに比べ、小規模M&Aは成約までの時間が短く、売り手側はまとまった売却代金を早く手にすることができるので、その後の計画も立てやすいといえます。
売り手側のデメリット
売り手側のデメリットは、買い手有利に交渉が進められる可能性があるということです。小規模M&Aの場合、売り手は中小零細企業や個人事業主であり、買い手は大手企業や勢いのある中小企業といったケースが多いです。
買い手側は、何度も買収経験があるのに対し、売り手は初めてのM&Aというパターンも珍しくありません。そのため交渉の流れをつかめず、安く買い叩かれてしまうこともあるでしょう。
また、小規模M&Aは取引金額が小さいため、仲介会社に支払う手数料負担がに大きくなってしまう点もデメリットだといえます。
買い手側のメリット
買い手側が小規模M&Aをするメリットは、すでに仕組み化されている組織やサービスを少ない時間と予算で手に入れることができる点です。
技術やノウハウ、従業員をそのまま獲得できるのはもちろん、 顧客や販売ネットワークなどをそのまま引き継ぐことで手に入ることもあるでしょう。
また、小規模M&Aは買収金額を抑えられるので、M&Aによるシナジー効果を最大限に生かせば、投資金額を回収するのも容易だといえます。さらに、小規模M&Aはその金額とスピード感から何度も繰り返し実施できるという点もメリットです。
買い手側のデメリット
小規模M&Aでは買収後に簿外債務が発覚したり、ずさんな管理体制が露呈することがしばしばあります。
小規模M&Aの売り手は零細企業や個人事業主であることがほとんどであり、企業体制が大手企業ほど整っていないことから、買収した側が契約の交渉時には知らなかった重大な事実を後から知るというケースは珍しくありません。
特に訴訟などが現在進行していないかなどは要チェック項目だといえます。これらのリスクを少しでも軽減するために デューデリジェンス(売り手企業の調査)は重点的に行う必要があるでしょう。
小規模なM&Aはどのように行う?
小規模M&Aはどのように行うのでしょうか。 小規模であっても進め方は一般的なM&Aとほぼ同じで、案件探しや契約を自力で進めるのは決して簡単ではないため、以下のような方法をとると良いでしょう。
M&Aのマッチングサイトを利用する
まずはM&Aのマッチングサイトを利用するという方法です。M&Aのマッチングサイトとは、インターネットを通じてM&Aの売り手と買い手をつなげるサービスのことを指します。
マッチングサイトのメリットは、なんといっても手軽さです。 売り手は自社や事業の情報を入力するだけ、買い手は自らの希望条件で絞り、サイト内検索するだけで容易に希望に合う事業や会社を見つけられます。
さらに、仲介会社や専門家に依頼するよりも手数料を抑えられるというメリットもあります。小規模M&Aは取引金額が小さいため、手数料負担が相対的に大きくなってしまいます。マッチングサイトを利用し手数料を抑えることができればこれを解消できるでしょう。
ただし、マッチングサイトを使う場合は、仲介会社や専門家に依頼する場合に比べ、手厚いサポートが受けられない傾向にあるので注意が必要です。
仲介会社に依頼する
M&Aを行う際にはM&Aの仲介会社に依頼するのが一般的です。
M&Aの仲介会社とは売り手と買い手の間に入り、マッチングから契約まで一連の流れをサポートする業者のことを指します。
M&Aを実施するには幅広い分野で、各分野における専門的な知識が必要となります。M&Aの仲介会社には各分野の専門家が在籍しているため、M&Aの実施におけるあらゆる場面で、質の高いサポートを受けることができます。そのため、仲介会社に依頼すればM&Aが失敗したり、トラブルが発生する可能性を下げることができるでしょう。
また、仲介会社はM&Aの案件を探し出すネットワークを独自に構築しているので、最適な相手を見つけ出してくれるでしょう。
ただし、 仲介会社への手数料は高くなる傾向にあり、少なくとも数百万〜数千万円は必要になります。取引金額が大きければ負担は少ないですが小規模M&Aのように取引金額が小さいと、相対的に手数料負担が大きくなることもあります。
近年は小規模M&Aに特化した仲介会社もあり、比較的低コストで依頼できるケースもあるのでそのような会社を選ぶと良いでしょう。
士業などの専門家に相談する
小規模M&Aでは税理士や公認会計士、弁護士などの専門家に相談するのも良いでしょう。先述しましたが、M&Aには専門的な知識が要されるので、その道の専門家に相談すれば抜かりないサポートを受けられるでしょう。
また士業などの専門家はM&Aの仲介手数料などを明確に定めているケースは少なく、M&Aの相手を無料で紹介してもらえることもあります。
ただし士業の人間にとって、M&Aのマッチングは本業ではなく、紹介先はあくまで士業の有するネットワークに依存しているため、案件の数自体は多くありません。そのため、自社に最適な相手を紹介してくれる可能性は低いといえるでしょう。
小規模であってもM&Aであることに変わりはなく、専門的な知識や豊富な経験が必要になります。実際に小規模M&Aを検討している場合は専門のアドバイザーによるサポートを受けることをおすすめします。 現在の悩みなどをM&Aアドバイザーに相談することで、最適な解決へと導いてくれるでしょう。
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